2005年 10月 26日 ( 1 )
第16回旅行は、ヒンドゥーの「性」地 カジュラホ
 今回は、カジュラホ(Khajuraho)に行って来た。
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 世界中に、ユネスコ認定の世界遺産は数あれど、こんな遺跡はここだけぢゃなかろうか・・・。
 ヒンドゥー教寺院群の彫刻の中に、数々の男女接合(要はS☆X)像があることで有名な場所だ。

 思い立ったが吉日、ということで、出発前日に旅行代理店と電話で連絡を取りつつ、航空券・宿・現地ガイドの予約を済ませ、前日夜に航空券とホテルチェックイン用のバウチャーを受取った。
 話はソレるが、インドの航空国内線の金額は驚くくらい高い。オーストラリアも確かそうだったが、国内産業保護のせいなのか、平気で往復10,000ルピー(約26,000円)を超える。今回も、往復で11,000ルピー余り・・・イタい出費だな・・・やっぱり移動は電車かバスに限るな。

カジュラホの概要

 ヴァラナシ経由で、カジュラホ空港へ向かう。e0074199_0235382.jpg
 飛行機の窓から下を見るが、何にも無いゾ・・・。

 カジュラホは、マッディヤ・プラデーシュ(Madhiya Pradesh)州の東部にある小さな村で、人口はわずか7,000人余り。デリーからは、南東の方角にあたる。
 村の名前は、「ナツメヤシ(カジュラ)」、「村(ホー)」に由来しており、今でもナツメヤシの木が生えている。
 村の主産業は、観光と農業。小麦、菜の花、グリーンピースの栽培を細々とやって生計を立てている農民が多いという。遺跡の観光で生計を立てられる人はごく一部のようで(政府公認ガイドになる必要があり、試験にパスしなくてはならない)、僕を案内してくれた人が誇らしげに語っていた。

 数々の遺跡が建造されたのは、この地がかつてチャンデーラ王朝の都だったから。e0074199_0422372.jpg 9世紀~14世紀にかけて繁栄した同王朝のもとで、数々の寺院が建てられた。特徴的なのは、同王朝がヒンドゥー教のみならずすべての宗教崇拝に対してとても寛容だったことだ。当時の建築物では無いが、後世(19世紀)にこのチャンデーラ王朝の宗教に対する姿勢を示す為に建てられた寺院が今でも残っている。一番左の円柱形の屋根がヒンドゥー教、中央の方柱形の屋根が仏教、右のドーム形の屋根がイスラム教の寺院を模している。
 チャンデーラ王朝庇護の下建設された寺院は85あったとされるが、イスラム勢力による廃仏毀釈および経年劣化(この地域一帯は花崗岩質だが、寺院はここから約35km離れたケンガワで採れる砂岩で作られた。だから彫刻し易いが、風化もし易かった)によって、今は20余りが現存するのみとなっている。


S☆X S☆X S☆X

 村の遺跡は大きく分けて、3つのエリアに分かれている。
 西エリアは、庭園状の敷地の中にヒンドゥー寺院群がある。
 東エリアは、3つのジャイナ教寺院が。
 南エリアは隣村ジャートカラ村にあり、2つのヒンドゥー寺院がある。

1.西エリア

 入場券を買って庭園内へ。
 例によって2重価格制で、インド人は10ルピー(約25円)、ガイジンは250ルピー(約630円)。
 庭園内には多くの寺院があるが、全てヒンドゥー教寺院だ。

 全ての寺院は、盛り土の上に建てられており、この一帯が湖だったことを示している。現在は庭園南側のシヴ・サーガル湖と北東のプレム・サーガル湖に僅かな水が残っているだけだ。

 現在、実際ヒンドゥー教徒が参拝する寺院は、この庭園内には無い。一旦イスラム勢力によって破壊された寺院には崇拝の価値が無いとされ、その宗教的観点から価値が残っているのは庭園に隣接するマタンゲーシュワラ(Matangesvara)寺院だけだ(同寺院については西エリアの最後に書く)。


ラクシュマナ(Lakshmana)寺院

 庭園入口から奥に向かって、左手前にあり、ヴィシュヌ神を祀る寺院。
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 930~950年に建てられたもので、外部の建築のところどころに日々の生活、特に性の営みの様子が彫られている。
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 ヒゲを生やした王と王妃とのS☆Xには付き人が。
 人間のS☆Xを覗き見する象(右端の象だけ右を向いている)。
e0074199_184911.jpge0074199_182555.jpg 足のトゲを取る女性の尿を受ける人の像。
 丈の短いサリーを着る女性の彫刻は、当時のサリーが超ミニだったことを示している。現在の丈が長いのはイスラム勢力による影響だと言われている。



外部の彫刻下段には、戦い、戦勝祝いの様子に交じって、やはりS☆X(なんとウマを犯そうとしているものもある)の像がある。e0074199_1204175.jpge0074199_1202818.jpg



ヴァラハ(Varaha)寺院
e0074199_1151564.jpg 寺院といっても、約5m四方の敷地に一匹の巨大なイノシシがいるだけ。
 だが、このイノシシ(ヴァラハといって、ヴィシュヌ神の化身)の体に細かい像が彫られていて、結構芸が細かい。
 前述のルクシュマナ寺院より若干古く、900~925年の建設と言われている。



カンダリヤ・マハーデヴァ(Kandhariya Mahadeva)寺院
e0074199_1461295.jpge0074199_1455767.jpg 1025~1050年に建設されたこの寺院は、チャンデーラ王朝の寺院建築の絶頂を示す最高傑作と言われる。正面から奥に向かって屋根が段々高くなり、最奥部の高さは約31mにもなる。また、壁面の彫刻は3段構成になっていて、よく写真やウェブで御目にかかるものは多分この寺院のものだろう。
e0074199_1502040.jpge0074199_1504053.jpg 因みに、ヒンドゥー寺院の屋根は、シヴァ神の住んでいるとされるヒマラヤ山系のカイラーサ山を模したものだ。
 内部の本堂には、例によってリンガ(男根)が祀られている。



ジャガダンビ(Nagadambi)寺院
e0074199_242465.jpg 11世紀初めに建設された寺院で、シヴァ神→パールヴァティ神→ジャガダンビ神と祀る神を変えているのだが、本堂に祀られているのは今もパールヴァティ神だ。
e0074199_24922.jpg 外壁の彫刻はかなりディテールが凝っており、芸術というか素人目にはただの「エロ彫刻」にしか見えない・・・。イスラム教徒にも到底理解されなかったらしく、廃仏毀釈の跡が強烈に残っている。



チトラグプタ(Chitragupta)寺院
e0074199_2104917.jpg 庭園奥の寺院群の一番右にある寺院で、作りは前述のジャガダンビ寺院のパクリっぽいが、本堂に祀ってあるのが太陽神スーリヤという点で特徴的。
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 イスラム勢力による破壊と経年劣化により、入口部の殆どはごく最近になって修復されたもの。


ヴィシュワナータ(Visvanatha)寺院
e0074199_2114729.jpg 1002年、時の王ダンガデーヴァによって建てられた。
e0074199_2162448.jpge0074199_216315.jpg 女性の彫刻がバラエティに富んでいて、外壁には様々な格好の女性像、また様々な体位のS☆X像がある。



ナンディー(Nandi)寺院
e0074199_2201019.jpg 寺院というか、ヴィシュワナータ寺院の一部みたいな感じ。
 シヴァ神の乗り物の牛ナンディーがドカンと鎮座している。



マタンゲーシュワラ寺院
e0074199_2324592.jpg 西エリアの中で唯一現在もヒンドゥー教徒が礼拝する、「生きた」寺院。
e0074199_234843.jpge0074199_2335625.jpg 900~925年の建設とされ、シヴァ神を祀っている。
 本堂には、巨大なシヴァリンガ(男根)が祀られており、お祈りをしてくれる教徒も傍に座っていた。寺院の外では、行者と警官が何やら痴話話。




2.東エリア

 このエリアで中心となるのは、3つのジャイナ教寺院。
 うち1つは、現在もジャイナ教徒が引切り無しに参拝に来ていた。

e0074199_2454999.jpg ジャイナ教は、紀元前5世紀頃、ヴァルダマーナが開いた宗教で徹底した不殺生を旨とする。神はおらず、24代続く「祖師」が宗教のトップにいる。教徒の中に商人が多く、彼らの財力によって寺院は豪華に装飾され、あるいは良く保存されている。
 ジャイナ教寺院の本堂に祀られている坐像などが、仏教寺院の仏像と酷似しているが、見分ける点はいくつかある。ジャイナ教の祖師はイヤリングをして座布団に座っているが、ブッダはイヤリングをせず蓮の花に座っている。



アディナート(Adinath)寺院
e0074199_2531851.jpge0074199_253416.jpg ジャイナ教寺院には、S☆Xしている像は無い(残念ながら・・・)。
 しかし、同じ王朝庇護の下、同時期に建てられているので、彫刻のタッチはとても似ている。
 それどころか、壁面にはヒンドゥー教の神の彫刻も見られる。
 この寺院の壁面には、ゴーケシュアラと言われる頭が牛で体が人間のシヴァ神の化身(方向・方角を司る神)の彫刻が見られる。
 また、バーラトナッテムと言うインド舞踊の様々なポーズをとる女性像が見られる。



パルスワナータ(Parsvanatha)寺院
e0074199_256786.jpg 23代祖師パルスワナータを祀った寺院。
e0074199_323711.jpge0074199_322581.jpg 1817年にヒンドゥー教寺院からジャイナ教寺院に変わった為、多くの彫刻はヒンドゥーの神のものだ。シヴァ神の彫刻が数多く見られ、シヴァとその妻パールヴァティが並ぶ横で化粧をする女性の像があったり、シヴァの左に死神(ヒゲが生え、右手に骸骨、左手にハゲタカがとまっている)の彫刻があったり、結構バラエティに富んでいる。

 
 
シャンティナータ(Shantinath)寺院
e0074199_37458.jpge0074199_365130.jpg 全高5mの第16代祖師シャンティナータを祀る寺院。
 現在もジャイナ教徒が多く参拝しており、祈祷を行う教徒が大勢いた。また、同寺院の正面には宿坊があり、参拝者が滞在出来るようになっている。



3.南エリア

 厳密には、ここはカジュラホ村ではなく、隣のジャットカラ村にある。
 舗装されていない細い道を進むと、ポツンポツンとヒンドゥー寺院が見えてきた。

ドゥラデオ(Duladeo)寺院
e0074199_3103774.jpg 1100年頃建てられたヒンドゥー寺院。
e0074199_316491.jpge0074199_3155268.jpg チャンデーラ王朝後期のもので、宙を舞うように踊る女性像や、様々な体位のS☆X像が見られる。



チャットゥルブージャ(Chaturbhuja)寺院
e0074199_318523.jpge0074199_319522.jpg 1100年頃建てられた寺院で、本堂に全長4mの巨大なヴィシュヌ神を祀る。
e0074199_3261684.jpge0074199_326354.jpg 前述のドゥラデオ寺院から約1km南に離れたこの寺院では、ヴィシュヌ神にまつわる面白い彫刻を見ることが出来る。
 ヴィシュヌ神の化身の奥さん(もはや訳が分からないが)のナルシンガは、頭がライオンで体が人間の女性。
 半分男性で半分女性の両性具有の彫刻は、アルダナリーシュワルと呼ばれている。



夜も寺院を堪能
e0074199_3373015.jpge0074199_3371858.jpg 日中見た寺院は、夜キレイにライトアップされる。
 毎夜開催される「ライト・アンド・サウンド・ショー」はガイジン価格250ルピー(約630円)で、英語版は19:00~20:00、ヒンディー語版は20:45~21:45。寺院が建設された当時の歴史を音声でドラマ仕立てで追いながら、ライトアップされる寺院を堪能する形式だ。1時間はちょっと引っ張りすぎだけど、なかなかキレイでよかった。



村の風景
 今回ガイドをしてくれたジュガル・ティワリさんは、政府公認のガイドで日本語も堪能。
 南エリアの寺院群のあるジャットカラ村の出身で、カーストはバラモン(ブラフマン)。
 この地域でガイドやドライバーをするのは上位カースト者が多いようで、ドライバーもバラモンだった。
e0074199_402670.jpge0074199_401530.jpg 空いた時間にジャットカラ村を少し案内して貰った。
 以前見た村(詳細は第6回旅行参照)とは違い、土壁の家は少なく、レンガの壁、しっくい壁が多い。ヒンドゥー・カースト者の割合が結構多いとのことだ。ただそれでも貧しい格好の子供は結構多く、飛行機機内で貰ったキャンディを配ると、たくさんの子供が寄ってきた。

 ジュガルさん曰く、カジュラホが世界遺産に登録されてから、色んな規制があったり(寺院の周囲の敷地の強制整理や政府公認ガイドによる観光業独占など)、環境汚染(西エリアにあるシヴ・サーガル湖は近年著しく汚染された)などの問題が発生しているが、それでも空港新設、特急用線路引込によって観光客が増えることで得られる金銭的メリットの方が遥かに大きいとのこと。
e0074199_405057.jpg 中央集権が進み、村から都市部に出稼ぎに行く傾向が強まる中で、自分の生まれた村で働き続けることが出来てとても嬉しいのだそうだ。

 インドでは、都市部と村部との間の格差拡大が問題視されているが、観光地として機能している村はまだマシということか・・・。



オマケ
 シヴ・サーガル湖近辺にあった、土産屋「Chandela Enporium」は結構オモロかった。
e0074199_3593846.jpge0074199_3592518.jpg 時間潰しにはもってこいで、物色中、飲み物もバンバン出してくれる。
 値段は高くて、値引きもしないので、何も買わなかったけど。
 画像は、気に入ったライオン像と2階の在庫部屋。



オススメ度(100%個人主観)

     ★★★★★ ・・・ ロコツな性描写を、飽く迄芸術と言い張るギャップを楽しむ

観光所要時間

     5~6時間 (全エリア合計)



by bharat | 2005-10-26 00:10 | インドぶらり旅