2006年 01月 16日 ( 1 )
インドのNGO事情

 1月初旬、日本から知人の知人のNGO視察団が来た。
 欧米や日本を中心に貧困撲滅の運動を行い、民間企業・NGO協働型の活動を実践している。
 その視察団と行動を共にし、デリーやデリー近郊のNGOの様子を知る機会を得た。

NGO大国インド

 御存知の通り、インドは社会主義独立国家としてその現代歴史をスタートしたが、その官主導の国家体制が破綻を来たすにつれ、民間レベルから警鐘を鳴らす、あるいは独自の活動を始める動きが活発になってきた。
 内容も実に多種多様で、ストリートチルドレン・孤児の保護・育成・社会復帰を支援するもの、農業技術の指導を行うもの、地震・津波等自然災害の復旧活動を行うものなど、挙げればキリが無い。
 団体の数は際限無く増えているとされ、総数は数百万、毎年数万ずつ増えているという報告もある。
 しかもたかがNGOと侮るなかれ、インドのNGOは日本のそれとは活動規模・動かすカネも比較にならない。というのも、日本のNGOは無償で国際支援活動を行う団体のイメージが強いが、インドのNGOは民間非営利団体全般を指すので、ゼニ儲けしない民間団体は全てNGOという呼称で呼ぶことが出来る。資金源も、インド国内の個人寄付や企業単位の寄付はもとより、インド内務省の定める外国貢献規制法(1976年制定:Foreign Contribution Regulation Act)に基づく諸登録を経れば、外国からの送金も受けられる。


あまりに異なる活動事情

 今回、訪問したのは、上述視察団と同行した3団体。
 それと、当社が資金援助を行っている1団体。

サラーム・バーラク・トラスト(Salaam Baalak Trust)
e0074199_18121298.jpg 1990年に設立された団体で、主として、家庭内暴力や経済的事情で家を出ることを余儀無くされた子供たちの家庭復帰を支援する活動を行っている。
 資本規模は約1,000万ルピー(約2,600万円)、従業員数は70名余り、保護している子供の数は数十~数百人規模(常時変動している)。
 本拠の事務所をオールド・デリーに置き、デリー駅敷地内にも施設を保有している。

e0074199_181147100.jpg まずは、デリー駅の施設を見に行った。
e0074199_18134661.jpg ここは、子供に対するカウンセリングを中心に様々なケアを行う場所に使われていた。
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 階段の踊り場ではゲームに興じる子供たち、建物内の一角には粗末な教室(といっても区切られていない)、バルコニーには医務室、事務所の一角には子供のカウンセリングの記録室があった。
e0074199_2184640.jpg 続いて、本部事務所。
 ここには、管理系(総務・経理等)の機能が終結している他、厨房や食堂、教室、寝室などがある。コールセンターもある。因みに、「食堂、教室、寝室」と言ったが、「食堂 兼 教室 兼 寝室」である。当日はこの部屋で、昼食を御馳走になった・・・味はなかなか♪

e0074199_21105451.jpg 訪問当日も、家出してきた子供が1人、事務所に来ていた。オールドデリー付近で途方に暮れているところを保護されたとのこと。実際にこうして保護される例はそんなには無いが、コールセンターへの通報は、1週間に10~20件あるのだそうだ。
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PRAYAS
e0074199_034626.jpg 1988年に設立された団体で、デリー市内に100数箇所の支所を持つ巨大な団体。年間約9,200万ルピー(約2.4億円)を動かしている。
e0074199_0344994.jpgスポンサーも個人寄付に頼らず、政府系補助やコカ・コーラやタージ・ホテルグループなど大企業からの資金援助も受けている。
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一番下の写真2枚は、アーンスト・アンド・ヤング(世界規模のコンサルティング・ファーム)が建てた学校。
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e0074199_0375534.jpg 活動も実に多岐に亘り、子供の保護、初等~高等教育、技術訓練、就職斡旋などを行っているという。
e0074199_0374313.jpg また、AIDS撲滅を目的とする性教育も実践しているといい、とかくこの手のテーマを避ける傾向のあるインドでは進歩的だと感じた。
 上述のSBTの手法が、子供たちの心のカウンセリングを優先的に行って、早く家庭に戻る様促しているのと異なり、このPRAYASは、子供たちを完全に囲い込み(巣立つまで、敷地外には出られないのだという)、自立出来るまで面倒を見るという方策を採っている。夫々特徴があって、興味深い。



HPPI(Humana People to People India)
e0074199_0565287.jpg 1998年に設立された、比較的歴史の浅い団体。主活動をラージャスターン州やジャールカンド州など大都市から少し離れた場所で行っている。クッティーナというデリーとジャイプールの間にある小さな村でも活動を行っており、今回はここの状況を聞いてきた。この団体は、団体名から察しの付く通り、人権保護の観点から弱者救済の行動を採っていて、ユニセフ、ユネスコ、国連エイズ計画などがスポンサリングしている。2004年には、大規模なエイズ撲滅キャンペーンを行ったというレポートもあった。

 
 
SOS Children's Village of India
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 最後は、当社が一部資金援助している団体。
e0074199_1171696.jpge0074199_117280.jpg 写真は、当社拠出金により完成した、コンピュータールーム、図書館、音楽室の様子とその記念式典の様子。

e0074199_118654.jpge0074199_1175472.jpg この団体は、1964年に設立され、災害などによって両親を無くした子供たちを保護・育成・自立させることを目的としている。
e0074199_1193562.jpg 興味深い点は、Villageの名の示す通り、子供たちと擬似家族で1つのコミュニティを形成し、子供を自立させていく点だ。子供たちは、年齢・宗教に関係なく、10人程度にグループになり、擬似の母親が付く。このユニットで子供は活動し、親(擬似)や兄弟(擬似)の愛情を受けながら育っていく。集落の中には、擬似家族1世帯が住める住居が団地形式で配置され、その徒歩圏内に、図書館・コンピュータールーム・音楽室などの共有施設がある。
 個人的な思いとしては、拠出した資金に対しての出来上がりについては、少々不満が残ったが(たったこれだけのPC?たったこれだけの蔵書?などなど)、まぁ僕が決めた事では無いし、ちゃんと形のあるものが出来たのだから良しと考えるか・・・。



気になったこと
 いくつかの団体を見て感じたことは・・・「自分の団体以外の団体の活動についてどう思っているか?」ということ。
 どの団体も、崇高な目的を掲げ、頭が下がる思いだが、どの団体も「他の目的を一にする△△団体と連携を採っています」とか、「□□団体とは、相互補完的な活動をしています」とはコメントしていない。ある団体などは、他の団体より何が優れているかを強調した上で、寄付を求めてきた。これでは、折角の慈悲心・愛護心も台無し・・・。
 こんなときくらいは、インド人持ち前の競争心はちょっと控えて貰って、協調体制で連帯感を持って活動してもらいたいものだ。


by bharat | 2006-01-16 10:53 | ふと思うこと