第62回旅行は、インドブームの火付け役バンガロール
今回は、カルナタカ(Karnataka)州を周遊。
インド南西部に位置するこの州は、州都バンガロール(Bangalore)を中心とする州内南部と、州内北部で全く様子が異なる、興味深い地域だ。 まずは、州都バンガロールから。 マイソール王国の英雄ティプー・スルタン バンガロールが歴史上脚光を浴びるようになったのは、そう昔ではない。 1537年に、地方領主であったケンペイ・ガウダがこの標高900mの高原に城郭を築いたのが始まり。 その後バンガロールは、南西140kmに位置するマイソール(Mysore)王国の支配地となり、同国の王ティプー・スルタン(Tipu Sultan、1750生~99没、在位1782~99)が18世紀末にバンガロールの大整備を行った。 このマイソール王国は、ハイダル・アリーとその子ティプー・スルタンの親子2代に亘る英雄譚が有名で、特に計4回にも亘ってイギリス東インド会社と戦ったマイソール戦争が際立っている。 前の2回(第1次 1767~69、第2次 1780~84)はハイダル・アリー在位時に、後の2回(第3次 1790~92、第4次 1799)は、ティプー・スルタン在位時に行われたが、ティプー・スルタンは王子在位を含めると、全4回の戦争に参加している。 ハイダル・アリーが権謀術数で乱世を潜り抜けたタイプだったのに対し、息子のティプー・スルタンは理想を掲げてイギリスと戦うタイプだった。 父が一介の傭兵から王になったのに対して、ティプーは生まれながらの王であり、若くして帝王学を学び、敬虔なイスラム教徒、インドの複数の言葉、ペルシャ語、アラビア語も堪能だったという。イギリスに屈しない、また旧態依然としたムガル帝国に固執しない、中央アジアや欧州との独自の外交政策を軸としたアイディアを持っていた。 イギリスとの宥和政策を採ることは考えず、近隣諸国がイギリスの軍門に下る中、徹底抗戦を完遂、フランスやトルコからの援軍を望めないことになり、近隣の大国ハイデラバードもイギリスに下ると四面楚歌状態となり、1799年の第4次マイソール戦争で玉砕、陣没する。 彼が、今尚、父以上にフリーダム・ファイターとしてインド人から崇拝されるのは、上記の様な潔い生き様故と思われる。 この親子の生き方、日本の真田昌幸・幸村父子と似ていないだろうか。1代で、武田家の家臣から大名にのし上がった策士昌幸と、徳川家に寡兵で挑んで「真田日本一の兵なり」と讃えられて戦死した幸村。何処の国にも、似た歴史が存在するものなのかも知れない。 さて、話を戻すと、マイソール王国は19世紀に入り、マイソール藩王国として残存、元の支配者であったウォデヤール家が代々の藩王を務めた。彼らの行政手腕は高く、インド独立後も最後の藩王がそのまま最初の州知事になったほどだ。 その後、言語をベースに州境が変更され、1956年にマイソール州、1972年にカルナタカ州となった。この関係で、現在もこの州の2/3はカンナダ語を話し、ウルドゥー語(10%)、テルグ語(7.4%)と続く。 市内の様子 空港に着くと、プリペイド・タクシーでバンガロール市街へ向かう。空港と市街は10km弱離れているのだ。 市内は活気付いており、英語の看板も多い。子供向けの施設などもあった。 日本のTVなどに出てくるシリコンバレーは、この市街地から20~30km離れたところにあるのだが、だからといって市街地が寂れているという訳ではない。 市内の見どころ 上述したように、ここバンガロールは、歴史上は、マイソール王国の防衛線上の一都市に過ぎなかったので、観光すべきところは少ない。 ティプー・スルタン宮殿(Tipu Sultan's Palace) この木、石、モルタルで造られた宮殿は、1781年にハイダル・アリーが建設を始め、10年後にティプー・スルタンが完成させた。 茶色と黄色の色鮮やかなコントラストは、最近復元されたもののようで、当初からこのような配色だったかどうかは分らない。 因みに、10分くらいで見終わってしまうこの建物、入場料がRs100-(約260円)とベラボウに高い(例によってインド人ならRs5-で見られる)。 これだけカネを取ってれば、綺麗に色も塗れる訳だ。 ヴェンカタラマン寺院(Venkataraman Mandir) ティプー・スルタン宮殿の隣にあるのが、この寺院。造りは、南インドに典型なドラヴィダ様式(本堂は低層かつ小さく、これを壁で囲んでその入口の塔門(ゴープラム)を巨大に飾る建築様式)になっており、色も鮮やかだ。 18世紀に、ハイダル・アリーがこの地方を支配する前のウォデヤール家が建てたもの。 ウシ寺(Bull Temple) 文字通り、ウシを祀った寺。 シヴァ神の乗物ナンディを祀っているのだが、どうみても脇にあるシヴァ神を祀った寺院(後述)よりも目立っている。 入口には、鳥居ならぬツノ・・・地面からニョキッと生えている。 この寺院も、ドラヴィダ様式で、16世紀にバンガロールの地方領主だったケンペイ・ガウダが建てたものと言われている。 本堂入口には、ナンディをセンターに、色々な神様の派手な彫刻が。 本堂に入ると、突き当りにドドォ~ンと巨大ナンディが! 御影石の一枚岩から彫られたというこのナンディ、僧侶との比較でも分かる通り、相当デカい。 そして、何故かメンタマグリグリ。 回廊型になっていて、ナンディの周囲を歩いて周ることが出来る。 あ、そうそう、忘れてましたが、隣の敷地にはナンディの御主人様、シヴァ神の寺院もあります・・・冴えないですが。 ラールバーグ(Lalbagh) そのまま、訳すと「赤い庭園」。 赤いダリアが有名みたいなので、それが庭園名の由来なのかも知れない。 因みに、このダリア、メキシコ原産(今でもメキシコ国花)で、18世紀にスウェーデン植物学者ダールさんがヨーロッパでの繁殖に成功、彼の名を採ってダリアになった。ナポレオン皇帝妃ジョセフィーヌがこよなく愛したこの花は、ヨーロッパ中で大流行した。 インドには・・・やはりイギリスやオランダ経由で入ってきたのだろうか。 この花、和名はなんとテンジクボタン(天竺牡丹)。 だが、行ってみての印象は、緑が綺麗な巨大な庭園・・・赤いダリアは見なかったような気が・・・。 しかも・・・それだけ(緑が綺麗なだけ)で何も見るもの無し。 切り株の化石も仰々しく飾られているが、別に、ね...。 面白かったのは、公園内の動物の置物の目が、全てどんぐりまなこだったこと。 ライオン、ウシ、ゾウと、みんな揃って何故かビックリ顔なのだ。 これは、インドを象徴する絵。 ゴミ箱が目の前にあるのに、みんな下にゴミを棄ててしまう。このあたりのマナーは、日本も酷いと思うが、こちらインドも御世辞にも良いとは言えない。清掃を生業とするカースト者が存在するから、上位カースト者は別にゴミを自分で処理する必要が無い・・・という歴史的原因の一端と見るのは多少大袈裟かな。 ウェンカテーシュワラ寺院 市の中心にある、何の変哲も無い寺院。18世紀頃の建築らしい。 と、寺院の中から大音響の打楽器音が。 結婚セレモニーが丁度始まったところで、これから花婿が花嫁を迎えに行くようだ。訳も分からず、群衆の中に交じると、1人が祝い菓子のようなものをくれた。 ヴィダーナ・サウダ(Vidhana Soudha) 市西部の官庁街で一際目立つのが、この横長の建物。 1954年に建てられたこの建物は、州政府および州議会の庁舎として機能している。 長い建物の中央部分には、インド国旗が掲揚され、天井にはアショカピラーが。なかなか存在感のある立派なデザインだ。 高等裁判所 ヴィダーナ・サウダの真向かいにあるのが、この真っ赤な建物。 高等裁判所として機能している。 バンガロール宮殿(Bangalore Palace) この東京ネズミーランドにある様な建物は、英国植民地時代だった1880年に建てられた、ウィンザー城のレプリカ(ミニチュア?)。とはいっても、だだっ広い敷地内に堂々と建っており、雰囲気がある。 何か催事をした直後だったようで、色んな大道具が散乱していた。 ここは、写真撮影禁止のようで、この写真を撮った直後、守衛数人が笛を吹きながら、凄い形相でBダッシュしてきたので、早々に退散した・・・。 オマケ デリーの友人に聞いて、「播磨」なる日本食レストランに行ってみた。 ・・・美味い。 ・・・そして安い。 デリーではありつけない、上レベルの牛肉を食わせてくれた。 ここバンガロールは、イスラム教徒の人口が多いので、牛肉が流通しているのかな? オススメ度(100%個人主観) ★★★☆☆ ・・・ シリコンバレーとしてではなく歴史的視点から一度観ておくべし 所要観光時間 3時間
by bharat
| 2006-06-05 10:30
| インドぶらり旅
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2年間のインド生活で、どこまでインド人に近づけるか!?
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