第95回旅行は、ポートブレア(アンダマン&ニコバル諸島)
インドの中で、一番辺鄙なところにある場所といえば、間違い無くココだろう。
大陸から遥か東に離れたアンダマン・ニコバル諸島が今回の旅行先だ。 インド屈指のリゾート地? 地図で見れば分かる通り、インドの連邦直轄地なのだが、インドの東よいうよりミャンマーの南と言った方がしっくりくるくらい、東にはずれたところに位置している。 この地域の歴史については、コチラに詳しく書いたので参照して欲しい。 この諸島で玄関口となっているのが、アンダマン諸島にあるポートブレア(Port Blair)。 1789年、英国の東インド会社のボンベイ海軍大佐アーキバルド・ブレア(Archibald Blair)がここを占領し、船舶の停泊場として使い始めたのが地名の由来だ。その後、一旦ここは荒天・疫病などの理由で1796年に放棄される。 現在、ポートブレアへはコルカタ、チェンナイからフライトが発着している(デリーからも経由便が出ている)。 今回は、3人の友達との旅行で、皆チェンナイからポートブレアに向かった。 欠航・遅延が続発するとウワサのAir Deccan便だったが、ほぼ定刻にチェンナイを出発。 Air Deccanは大都市間は激安価格なのだが、この区間は片道5,000ルピー(15,000円)もした。 にも関わらず、機内はほぼ満員御礼。 インド人にとって、身近なビーチリゾート地なのだろうか。 70ルピー(210円)でサンドイッチコンボを購入(Air Deccanでは機内食は希望者が別途購入する仕組)。 コーヒーは自分で粉を混ぜるタイプ。 これが・・・ 混ぜると、こうなる。 めちゃ甘い。 ポートブレアに近づくにつれ、大きな島がたくさん見えてくる。 哀の流刑地 今でこそ、リゾート地としてPRされているアンダマン諸島(ニコバル諸島は軍事施設)だが、その歴史は悲惨そのもの。 先住民は、年々減少の一途を辿り、絶滅寸前の民族までいる。 英国植民地時代には、インド独立を叫ぶインド人たちを片っ端から政治犯として捕まえ、大陸からこの地の刑務所にぶち込んだ。 アンダマン観光は、そんな歴史の跡を確認する作業ともいえる。 独房監獄跡(Cellular Jail) 1858年に建てられた監獄の跡。 セポイの反乱に始まる第1次インド独立戦争の後、英国政府は一旦は放棄したポートブレアに監獄を造営、インド独立を目論む反乱分子をここに送り込むようになった。 第2次世界大戦期(インドでいう第2次インド独立戦争)の最中には、更に大量のインド独立戦士たちが収容されてきた。 監視塔を中心に、放射状に独房の棟がのびる建物構造。 中の独房や廊下は、今でこそキレイに白いペンキで塗られているが、独房内にはトイレはおろか排水溝も見当たらず、当時は糞尿まみれの不潔な状態だったという。 独房棟の一番奥には、特別に写真の掛かった独房があり、そこがヴィール・サヴァルカール(Veer Savarkar)が収容されていた独房だと分かる。 彼は、インドでは最も有名な活動家の1人で、『1857年 インド独立戦争(The Indian War of Independence 1857)』を発表・出版し、これがもとで1911年4月にこの監獄に入れられた。 監視塔の部分は、博物館になっており、当時ここに収容された政治犯や、その他インド独立のために戦った活動家(インドでは彼らをFreedom Fighterと総評している)の写真や活動を展示している。 中村屋にカレーを伝えた、ビハリ・ボースの絵もある。 ここに収容されたという訳では無いみたいだ。 一際目を惹いたのが、この写真。 カタカナと漢字で、「アンダマン刑務所」の看板。 ここは1942~45年、大日本帝国軍の支配下になっていたのだ。 正確に言うと、スバス・チャンドラ・ボースが大日本帝国軍庇護下でシンガポールに建てた自由インド政府の支配下に置かれたのだ。 ナガランド州のコヒマ同様、こんなところにもインドと日本との接点が。 大日本帝国軍と自由インド政府軍の集合写真や、自由インド政府のシンガポール本部の写真も展示してある。 館内には当時の拷問の様子も展示。 これは絞首台。 下の白丸部分がパカっと開くつくり。 ただの偶然だが、このような残酷な目に遭っているカバ(のゴミ箱)を発見。 ここでは、夕方の6時半から、音とライトのショーが開催されている。 この手の催しは、デリーではプラーナーキラーで、他にもカジュラホやグワリオールで観られる。 ベースはヒンディー語で行われるが、英語でやってくれることもある。 事前に確認すべし。 ヴァイパー島(Viper Island) ポートブレアからフェリーで45分・・・ヴァイパー島は主に政治犯の絞首処刑を行っていたところだ。 島には牢獄の跡もある。 2004年12月26日に発生したスマトラの大津波によって、ボロボロになったマングローブが痛々しい。 軍用艦を修理する水上ドックも・・・この一帯が軍事上の要衝であることを再実感。 人類学博物館(Anthropological Museum) 市内にある博物館。 ネグロイド系・モンゴロイド系の民族一覧、先住民の移動経路(インドネシアから流れてきたことを示している)、住居などを展示。 日本軍戦没者碑 ガンディー・パークという庭園の中にある、大日本帝国軍戦没者の社。 1997年に海軍慰霊団が来て造ったらしいが・・・恐らくこの南方戦線で生き残った方々が有志で組成した団体なのだろう。 思わず、手を合わせてしばし黙祷した。 因みに、慰霊団の名前を記した名簿がタテヨコ間違って社に掲示されていたので、現地の人に直す様依頼・・・果たして後日ちゃんと直してくれたのだろうか・・・? このガンディー・パーク、地元民憩いの場として作られたらしい。 地元民は殆どいないのだが、ナゾの遊具がそこら中に設置されている。 写真は、シュールなデザインのイス。 その他の見どころ 島の悲しい痕跡だけでなく、ちゃんと観光地らしい見どころもある。 チャタム製材場(Chatham Sawmill) 1836年に英国によって建てられたこの製材場は、アジア最大の規模を誇る。 コービン入り江(Corbyn's Cove) ビーチリゾート地はアンダマン諸島の北の島々に広がっているが、ポートブレア付近にもちょっとした砂浜がある。 入り江なので、全長は100~200mくらいしか無いのだが、砂浜の砂は細かくて色も明るい。 ここから見える景色も良い・・・のだが・・・ ふと脇に目を遣ると、2人のインド人がゴミ拾いをしている。 着ているものもボロボロで、低所得労働者なのは明らかだ。 観光で来る金持ちのインド人たちが容赦無く捨てるゴミを、こうして拾っている構図は、インド本土と何ら変わらない。 砂浜のすぐ近くには、ゴミ焼却場があり、煙がもうもうと上がっていた。 なにやら、環境破壊の現場を目の当たりにしている気がした。 砂浜がちょうど途切れた辺りには、第2次大戦下に日本軍が作った塹壕が残っている。 このタイプの塹壕は、海岸線沿いにいくつか残っている。 インドはここをどうしたいのか?? 今回、ここを訪れて思ったこと。 それは・・・ 「インドはこのアンダマン諸島をどうしていきたいのか??」 という疑問だ。 リゾート地を謳っているが、ホテル・レストランなどの受容れ施設は御粗末で、スタッフのレベルも超インドレベル・・・ホスピタリティの欠片も感じない。 津波で受けた被害の復旧も遅々として進んでいない。 フェリーで海に出れば、軍艦の写真を撮るなと船員が乗客を注意する。 1点フォローするとすれば、現地の旅行代理店のサービスがとても良かったという点。 環境対策も酷いもので、「ゴミを捨てるな」の看板もロクに無ければ、ゴミ箱も殆ど設置されていない。 観光客は、海や道路に平気でゴミを捨て、波打ち際や道路脇にはゴミが積もっている。 行きの飛行機から眼下に広がっていた島こそ綺麗に映ったが、いざ上陸すると汚い部分しか目に入らなかった。 やりようによっては、モルディヴのような発展の仕方もあるのだろうが、今のままではまず間違い無く近い将来、環境破壊でリゾート地としてのステータスは無くなるだろう。 いろいろ考えさせられる場所だった・・・。 オススメ度(100%個人主観) ★☆☆☆☆ ・・・ リゾートとして来たら相当ガッカリする 所要観光時間 5時間 (観光地は少ない)
by bharat
| 2007-05-27 10:30
| インドぶらり旅
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2年間のインド生活で、どこまでインド人に近づけるか!?
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